目的と手段は違うもの。履き違えに要注意!?
いきなりですが、ゆうさんに質問です。
ゆうさんは、目的と手段の違いを説明できますか?
目的は・・・『目指すところ』よね。
手段は『目指すところに行くための方法』のことかな。
そうですね。では、もう1つお聞きします。
悩んだときに、目的と手段を分けて考えられていますか?
えっ!?・・・ど、どうかな?
意識してはいないかも。
皆さんもご存知のとおり、目的と手段は違うものです。
ですが、頭では分かっていても、目的と手段を履き違えてしまということはよくある話なんです。
ホームルーム:目的と手段を間違えると自分が辛くなる!?
1つ例題を出してみましょう。
ここにZさんという25歳の女性がいます。
Zさんには、もともと結婚の願望はありませんでしたが、周りで結婚する友人が増えてきたこともあって『幸せになりたい』『幸せになるために結婚したい』と考えて生活を送っていました。
ある時、Zさんは友人の結婚パーティーで知り合った一人の男性と縁あってお付き合いするようになります。
そして、Zさんは男性とのデートを重ねるたびに『彼氏と結婚することが幸せになる方法だ』と思うようになっていきます。
さて、突然ですがここで質問です。
この場合のZさんの目的は『結婚』でしょうか。それとも、『結婚』とは別のところにあるのでしょうか。
簡単よ!『結婚することが幸せになる方法』だから、結婚することが目的よね。
確かに結婚することが幸せだと言っているので、結婚が目的と言うことはできます。
ただ、Zさんは何のために結婚したいと思っているのでしょうか?
あっ!幸せになるためだ!
ってことは、『幸せになるため』が目的になるのかな??
さて、一見すると『結婚』も『幸せになる』もどちらも目的になるように思えます。
実際のところどちらが目的だと思いますか?
実は、この目的を履き違えてしまうと、その後の自分の人生が大きく変わってしまうことがあります。
例えば、先程のZさんがお付き合いした男性と無事結婚できたとして、その後の結婚生活が上手く行かなかった場合、どうなるか考えてみましょう。
Zさんは、お付き合いしていた男性と念願の結婚することができましたので、その瞬間はもちろん幸せで一杯です。
ところが、その後待っていた結婚生活は、Zさんの思ったようにはなりませんでした。
もともと、束縛されるのを嫌うZさんは、男性との考えがまるで合わなかったのです。
もし、Zさんの目的が『結婚すること』だった場合、この現実をどう受けとめるのでしょうか。
おそらく、『結婚という目的を達成したのに、幸せになれないのは何でだろう?』、『私は目的を達成しても幸せにはなれない女だ』みたいに考えてしまうのではないでしょうか。
目的が結婚だから、それが達成されたのに上手く行かないと『私は不幸な女』みたいに思っちゃうかもしれないわね。
そうですね。
つまり、目的と手段を間違えると、自分が辛くなることがあるということです。
今回のZさんの例の場合、『幸せになること』を目的にした方が正解と言えそうです。
このように手段を目的化してしまうと、目的を達成した後の結果によっては自分自身のクビを締めてしまうことがあります。
だから、目的と手段を履違えないことはとても大切なことなんですね。
目的と手段を間違えないことが大切なのは分かったけど・・・どうしたら間違えずにすむのかしら?
やっぱり気になりますよね。
じゃあ、今日はこんな内容でお届けします!
目的は目的、手段は手段としてしっかり分けて考えられるようになることを目的とした内容になっています。
今回は相談現場の事例も入っているのね!何か楽しみ!
では、早速行ってみましょう!
1時間目:目的と手段を履き違えない方法
目的と 手段を履き違えてしまうのには、理由があります。
それは、『何がしたいか』で物事を考えてしまうからです。
『ドリルの穴』理論
例えば、あなたがホームセンターの店員をしていて、お客様から「ドリルは売っていますか?」と聞かれたとします。
ところが、あいにくドリルは全部売り切れで在庫も一切ありません。
さて、あなたはこのお客様にどのように話をしますか?
私なら「申し訳ありません、在庫がありません」って話をするわ。
確かにそうですね。
ですが、そのお客様が本当に欲しいのはドリルでは無いんです。
えっつ!?だって、ドリルを買いに来てるんでしょ!
アメリカの学者レビットは、自身の著書『マーケティング発想法』で「ドリルを買いにきた人が欲しいのは、ドリルではなく穴である」と言っています。
つまり、ドリルを買いに来た人は、簡単に穴が開ける方法さえあればドリルは『いらないもの』ということになるわけです。
そして、この場合『穴が欲しい』が目的で、『ドリルが欲しい』が手段になります。
せっかくなので、もう少しだけ深い話をしましょう。
そもそも、このお客様は本当に穴を開ける必要があるのでしょうか?
お客様が望む状態になるために、穴をあける以外の方法が見つかれば『穴をあけること』そのものをしなくても済むかもしれません。
この場合『穴が欲しい』が目的ではなく手段に変わってしまう点に注意が必要です。
『お客様が本当に欲しいのはドリルでは無い』って理由がこれです。
なるほどね。理屈は分かるけど・・・
それなら私はどう対応したら良いのかしら?
『何がしたいか』ではなく『どういう状態になりたいか』で判断する。
では、ドリルを買いに来たお客様に対して、どのように対応したら良かったのでしょうか。
答えは、お客様自身が『何をしたいか』を聞くのではなく、『どういう状態になりたいか』を聞くということです。
つまり、『穴が空いている状態』がお客様の望んでいる状態(目的)だとすれば、その目的が分かるまで『なぜドリルが必要なのか』『何をするための穴なのか』を聞くということです。
もし、1箇所穴を開けられれば良いという話なら、ドリルではなく『キリ』で十分かもしれません。
もし、大量に穴をあける必要があるという話であれば、業者の出張サービスを案内できるかもしれません。
穴をあける目的をしっかり聞くことで、お客様はドリルを買うよりも満足される可能性があるということです。
なるほど!お客様が『望む状態』を聞くようにすれば良いのね。
そうですね。そして、この話はお客様だけではなく自分に対しても同じことが言えるんです。
目的と手段を履き違えない方法
目的と手段を履き違えないためには、『自分が何をしたいか』で判断しないことです。
『自分が何をしたいか』というのは、あくまでも『手段』にすぎないからです。
冒頭で登場したZさんは、『幸せな状態になりたい』という目的を持っていました。
そして、幸せな状態になるために、『結婚』という手段を取りましたが、本当は『幸せな状態になる』ために『結婚する必要はない』と思ったかもしれません。
そもそもZさんには、結婚願望はありませんでした。もともと自由でいたい気持ちが強く束縛を受けることが嫌いな性格だったからです。
ところが、『周りの友人が次々と結婚し、幸せそうにしている』ところを見て、結婚した方が幸せになれるかもと考えるようになります。
この時、もし『私って何で結婚したいんだっけ?』『私って、そもそも束縛されるのは嫌いじゃなかったっけ?』と考えられていたらどうでしょう。
Zさんは、結婚しないという選択をしたかもしれません。
ひょっとすると、自分の考える夫婦のあり方について結婚前に男性に伝え、納得した上で結婚することができたかもしれません。
そして、お互い納得した上で結婚できれば、夫婦関係は良好だったかもしれません。
このように、『自分が何をしたいか』で物事を考えない方が上手くいくことがあります。
『自分は何をしたいのか』『自分はどうしたいのか』ではなく、『自分はどんな状態になることを望んでいるのか』『自分はどうなりたいのか』を考えましょう。
つまり『自分がこれをやりたい』と考えるのはなぜだろう、きっと理由があるはずだと考えるのです。
これが、目的と手段を履き違えいない方法です。
2時間目:相談業務の現場から
では、実際に目的と手段を履き違えてしまったお話を1つお届けします。
今回のお話は、実際に私が受けた相談内容を小説形式でまとめたものです。(相談の方向性については事実ですが、それ以外は全てフェイクです。)
それでは、たかさんライフの相談室にご案内します。
相談者A子さん
その方は大学生で、A子さんと言います。
A子さんは、身長160cmくらいで少し細身。見た目には読書や絵画が好きそうな大人しいタイプの女性でした。
初対面のとき、マスクをしていたので表情は分かりませんでしたが、少しうつむき加減で暗い感じの印象を受けたのを覚えています。
そんなA子さんが私のところにやってきたのは、昨年1月のことです。
「私、整形したいです」
4人がけのテーブルと椅子があるだけの相談室にA子さんを案内しました。
たかさん「どうぞ椅子にかけてください」
私がそう伝えると、A子さんはゆっくりと椅子に座り、何か思いつめたような表情でテーブルを見ていました。
そして、しばらくの沈黙があった後、A子さんはゆっくり口を開きます。
A子さん「私、整形したいです。」
A子さんの話を詳しく聞くと、次のような答えが返ってきました。
- 親から「変な顔」だと言われたこと、小学校の時にクラスメイトから自分の顔を指で刺されて笑われたことが自分のトラウマになっていること
- それ以来、学校にいる間もマスクを取れないくらい、マスクが欠かせなくなってしまったこと
- 自分でもマスクが欠かせないのは異常だと気づいていて、病院の精神科に通っていること。
- 大学の卒業式の後に立食パーティーが予定されており、その時くらいはマスクを外して皆に顔を見てもらいたいと思っていること
- 今のままでは顔に自信がもてないし、病院に通っていても立食パーティーに間に合うか分からないから顔を整形したいと思っていること
- 整形することは誰にも相談していないこと
一通り話が終わった後、私はいくつかA子さんに質問を投げかけることにしました。
たかさん「A子さんは、整形すれば自分に自信が持てると思っているんですね。」
A子さん「はい。自信のない自分が嫌なんです。整形すれば自信が持てるんです。」
たかさん「大学にいる間は一度もマスクを外したことはないのでしょうか?」
A子さん「お昼や飲み会のときは外します。でも、それ以外はつけてます。」
たかさん「学校でマスクを外すこともあるんですね。」
A子さんは、マスクで顔を見られることが嫌であるにもかかわらず、お昼の時はマスクを外しているのだと言います。
そこが切り口になると考えた私は、もう少しだけ質問をしてみることにしました。
たかさん「お昼ご飯は1人で食べてるのでしょうか?」
A子さん「仲の良い友だちと2人で食堂で食べてます。」
たかさん「友達と2人で食べているんですね。食堂には他にも人がいるでしょう?」
A子さん「そうですね。お昼時なので、混んでいます。」
たかさん「確認しますが、お昼の時はマスクを外していらっしゃいますよね?」
A子さん「はい。」
たかさん「マスクを外しているA子さんを見て笑っている人はいますか?」
A子さん「いえ、いません。けど、それは私を見ていないからだと思うんです。」
私はここまでの話を聞いて、A子さんの目的が『整形することではなく、自信をもった理想の自分になりたいこと』ではないかと考えました。
気心の知れた仲間には顔を見せているという事実、食堂では同じ大学の人が昼食を食べにくる(クラスメイトも食堂に来る可能性がある)にもかかわらずA子さんがマスクを外せているという事実があるからです。
そこで、私はこうA子さんに尋ねました。
たかさん「もし、顔を変えなくても誰も笑わなかったとしたら整形したいと思いますか?」
A子さんは少し考えたあと、こう言いました。
A子さん「そこまでしなくても良いかなとは思います。」
・・・お話は以上です。
えっ!?ここで終わっちゃうの?
ごめんなさい。これ以上書くとフェイクが効かなくなりそうなので辞めました。
ですが、この後私はA子さんと「目的は何なのか」を確認し、最終的には整形するという話はなくなったとだけお伝えしておきます。
まとめ
いかがでしたか。
『自分がやりたい』ことの奥には、本当の自分の気持ちが隠れていることが少なくありません。
自分のやりたいことは目的ではなく、手段であるという意識をもつだけで、目的と手段を履き違えない自分になることができます。
『なぜ』それを自分がやりたいのかをよく考え、自分がどんな状態になりたいのかを見つけて行きましょう。
- 『自分は何をしたいのか』『自分はどうしたいのか』ではなく、『自分はどんな状態になることを望んでいるのか』『自分はどうなりたいのか』を考えましょう。
- 『自分がこれをやりたい』と考えるのはなぜだろう、きっと理由があるはずだと考えるのです。
内容は分かったんだけど・・・
どうかしました?
何て言うか、今回の記事はあんまりポジティブになれる感じの内容じゃない気がするのよね。
えっ!?あっ・・・そ、それは、ほら、色々な考え方を取り入れたほうが良いかなって思ったんです!?
ふぅ〜ん。まあいいわ。
(まさか、記事を書いている本人が目的と手段を履き違えてたりしないわよね?)
長文をお読みいただきありがとうございましたっ!!